Chikanism

現実と非現実のあいだ

嫌いになったことも忘れてたよ

昔付き合っていた人が、セブンイレブンでバイトしていた。深夜バイトだ。

夜の11時ごろから始まって、朝6時に終わる。深夜2時ごろが休憩だった。

わたしはよく2時ごろまで起きていて、彼へ連絡をしていた。休憩時間じゃなくても、暇なときはたまに連絡をくれた。

 

別れてからセブンイレブンは嫌いになった。

「財布に32円しかない〜」と言ったときは、「これしかないけどこれあげる」と、セブンイレブンのくじのお菓子か何かの当たり券をくれた。家に遊びに行ったときは「ここだよ」とバイト先を教えてくれた。ギャンブルばかりしていつもギリギリの生活を送っている店長の話をよく聞いた。

 

「元彼がバイトしてたところだからセブンはあんまり好きじゃないんだよね」と電話越しに研究室の同期と話しながら、住んでたマンションの向かいのセブンイレブンにアイスを買いに行ったことがあった。

研究室の同期の男の子は翌日までの資料を作りながら、「そうなんだ」と笑っていた。

 

 

「コンビニのなかではセブンがダントツで好き」と誰かが言った。わたしはコンビニにこだわりがないから「そんなどこも変わらないけどな〜」と答えた。

元彼がセブンイレブンでバイトしててよく休憩中に連絡してたから、別れてから嫌いになったなんて、嫌いになったことさえすっかり忘れていた。

 

いま住んでいるマンションの近くにセブンイレブンがある。ローソンもある。どっちでもいいのだけど、ふとセブンイレブンに行った。雑誌を買うか迷って、アイスを見て、何も買わずに出た。

家までの道を歩きながら、そういえば「セブンはあんまり好きじゃない」なんて電話で話しながらアイスを買って帰った日があったことを思い出した。

 

 

本当は別に嫌いじゃなかったけど、思い出してしまうからなんとなく避けたかっただけ。だと思う。

好きだったことさえも忘れるくらいだから、嫌いだと思っていたこともすっかり忘れていた。人生ってそんなもんなんだな、と思える回数が増えた。忘れたくないと思ったことも忘れるし、忘れたいと思ってたこと自体も忘れてしまうものだ。

 

こういうことをたくさん思い出すようになったから、わたしの人生もそろそろ次のステージに行くのかな、なんて考えた。わたしたちは同じ場所にはいられなくて、ずっと流されて生きていくんだな、とか。