Chikanism

現実と非現実のあいだ

思い出さなくてもいいことを思い出さなくなる日が来るのかな

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夜桜を見に行こう、と約束して見に行ったのはもう何年も前のことだ。

本当は昼のお花見が良かったけれど、当時は大学のサークル(のようなもの)が忙しくて時間がとれなかった。

 

サークルが一緒だった彼とは、何回かデートをして、手を繋いで歩いてはいたものの、付き合ってはいなかった。男の人と手を繋いだのは、その人が初めてだった。

その日は4月7日で、嵐山の夜桜を見ようと約束して、ふたりでサークル活動の拠点であるオフィスを出た。

1時間半くらいかけて嵐山まで行ったものの、あまりライトアップのようなものはなく、がっかりしながらお蕎麦を食べた。今からでも行ける場所を探して、二条城のライトアップへ行くことにした。

電車を乗り換えて少し歩いてたどり着いた二条城は、人がたくさんいた。観光シーズンだ。

その日は4月と言っても夜は肌寒かった。なんとなく敷地内を歩いて、お堀の川を眺めていた。

川(池)を泳ぐ鯉の話をしていたのを覚えている。とてつもなくどうでもいい話だ。鯉は寝ているとき何を考えているんだろうね、みたいな。話題なんてなんでも良かった。

寒いから移動しようかなと思ったものの、彼がその場から動こうとしないので、わたしもなんとなく隣に立って、どうでもいい話を続けた。

 

後からわかったことは、彼はそこで告白するタイミングを考えていたらしかった。帰り道、わたしは「寒かった!」と文句まで言った。ごめんね、と彼は言って、手を繋いで帰った。

 

 

もうあれから何年も経つ。大学もとっくに卒業して、連絡もまったくとっていないし最後に会ったのがいつかもわからない。すごく好きだと思っていたことさえも、時間が経てば忘れられるものなんだなと、今になってそれはわかった。

どうでもいいただの思い出のひとつとして思い出せるようになったのはなんだかんだ最近のことだ。良い別れをしなかったので、彼のことはたぶんつい最近まで思い出したくもなかったように思う。

 

平穏な気持ちで思い出せるようになったのは時間のおかげだし、たぶんわたしも大人になったのだろう。

夜桜の話をしても思い出さなくなる日も来るのだろうか。それさえももう、どうでもいいことだけれども。

 

今週のお題「桜」