Chikanism

現実と非現実のあいだ

スイカバーはいちご味

イカバーはいちご味だ、とわたしは言った。

電話越しに、「そんなわけないじゃん」と彼が言う。「いやいやいや、ちゃんと食べたことないんじゃない?いちごだよ」とわたしは再び主張し、彼は呆れたように「じゃあ今度試そう」と呟いた。

 

 

 

京都の遊ぶ場所と言えば四条通りだ。そこくらいしかない。買い物をするのも、ご飯を食べるのも、お酒を飲むのもたいてい四条で済む。

予定がなくなったという彼と、わたしはご飯を食べるために例によって四条に来た。串かつのお店で、なぜかタコを焼いた。炭の匂いがつくなあ、と思いながら、クラゲの話をした。

 

京都で誰もが一度は経験するのは、鴨川沿いに座ることだ。もしくは、酔いつぶれて倒れること。

タコを焼き終えたわたしたちは、例によって鴨川へ向かった。途中でマクドナルドによって、カルピス味のシェイクを買う。そしてまた歩きながら、電話越しのスイカバーの話を思い出して「スイカバー買おう」と彼が言い、わたしは「絶対にいちご味だよ」と強く言って、少し遠回りしてコンビニに寄ってスイカバーを買った。こっそりトイレにも行って、歩いて痛くなったかかとに絆創膏を貼った。

コンビニを出ると湿った空気がまとわりついてきて、コンビニで冷えた肌がまた汗ばむ。買ったばかりのスイカバーを食べて彼は「いちご味ではない」と笑った。わたしもひとくち食べて、「どう考えてもいちごだ!」と主張したけれども、これは押し問答に終わり、わたしたちは「いちごじゃないけど、スイカでもないね」という結論に達することになった。

鴨川沿いの椅子に座って、しゃべることがなくなって、黙って川を見ていた。周りにはたくさん人がいて、やっぱりみんな少し酔った様子だ。帰るには少し早いけれど、京都は店が閉まるのも早いし終電も早い。時間を潰す場所がないのだ。

 

わたしは別に、スイカバーがいちご味であろうがスイカ味であろうがどっちでも良かった。ただ、「スイカバーがいちご味だ」と言ってふたりで食べたかっただけ。夏だからな、と夏のせいにして、「そろそろ帰ろっか」と蒸し暑くて居心地の悪い鴨川を後にした。

 

 

っていう夏が過ごしたかったという話です。実際いちご味だと思います。